第30回東京国際映画祭

例年スルーしてきた東京国際映画祭だけど、今年はガッツリ参加してきた。鑑賞した作品の感想はツイッターで呟くとして、こちらではダラダラと総括的なことをまとめておこうと思う。今年の体験が来年度以降の参考にでもなれば。

 

■取れないチケット

とにかく取れない。幾つかの作品を事前抽選制、その他の作品も部門ごとに土日の午前/午後と4つの時間帯に分けて販売開始にしたのに、結局開始時刻にはアクセス過多でページがダウンして繋がらなかった。ちなみにチケット購入ページの案内が販売開始以降も全くなかったので、チケット購入レースの第一関門が購入ページへのリンクを探すという残念な展開に。一番観たかった作品「スリー・ビルボード」も90分ほどかかって購入ページに繋がった時は、残り10席程度で滑り込みの購入となった。同じタイミングで販売を開始した他作品は完売していたものもあった。昨年ニュースにまでなったチケット取れない問題は全く解決しておらず、更に4回に販売タイミングを分けたせいでPCから離れられず、土日の外出が出来なくなってしまったという残念な結果に。

PCでは繋がらないけどスマホでは繋がるという事があったので、色々な接続方法でチケットページへのアクセスを試みるのが良いと思う。アイフォンだと繋がりやすいという真偽不明の情報も流れていた。

 

■チケットの追加販売

とはいえ、映画祭の運営が確保してただろう追加分のチケットを購入する事ができたので、結局は観たい作品を観る事ができた。90分もかけて取った「スリー・ビルボード」のチケットも前日に数席だけれども追加販売があったので、チケット購入で慌てる必要はなかったなと反省、次回みんなも気を付けよう。ジャニーズの登壇があるのでプレミア化していた「鋼の錬金術師」でさえ、前日の追加販売で購入する事ができたので、チケットに関しては諦めるのは良くないと結論。1番の話題作の「シェイプ・オブ・ウォーター」とゴア元副大統領が登壇する「隠された真実2」は確認できなかったけど、それ以外は大体追加販売があったと思う。

 

■追加販売に関してメモ

特に決まった時間帯で追加販売されるということは無いようだったけれども、深夜や午前中の追加は無かったような。それと複数作品同時に追加されるので、別作品の追加を確認したら、目当ての作品のチケット状況を確認すると良いかも。前日だけでは無くて数日前にチケット追加の場合もあるので要注意。当日追加はあまり記憶に無いけど、購入画面で誰かが確保していたチケットが、結局購入されずに再販売って事は良くあるので数分置いて再チェックしてみるのも大事。運営も後方の末席を追加に回すので、座席位置に期待はしてはいけない。追加から1時間もすれば完売してしまうので、希望の作品がある場合は30分置きに確認すれば良いと思う。バカっぽいけどこの方法でグランプリ作品のチケットをギリギリ前日に購入できたのでやっぱり大事なこと。ちなみに最終日のグランプリ作品上映のチケットは早々に完売して、グランプリ作品発表後にチケットの追加は無かったので早々にチケットは抑えておこう。観た作品が上映される可能性もあるけれども、良い映画は2回見ても良いじゃない。

劇場前のチケットセンターに行けば、オンラインに出ていない追加チケットが買えるんじゃないかとも考えたけれど、端末で一般販売と同じ画面でチケット状況を確認していたので、望みは薄いと思う。

  

■座席について

絶対に右寄りの座席がいい。字幕がスクリーンの右端に付くから。

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たとえば一番大きいスクリーン7の左端に座ろうものなら、字幕をみるのに苦労してしまうので、選択をする余裕があるなら左端は避けた方が無難。特に前列は要注意。スクリーン7以外なら別にそこまで広くないので、場所にこだわる必要は無いと思う。ちなみに画面真下には英語字幕が付く。

 あとスクリーンによっては設置されているプレミアムシート。+500円で荷物も置けるし、物食べても隣に気を使う必要ないしで座り心地以上に快適なのでお勧め。どうせヒルズのコインロッカーに荷物を置く予定ならプレミアムシート良いかと。六本木TOHOシネマは傘立てが椅子に付いていないので雨具置きとしても重宝。

 

■EXシアター

コンペ作品の上映会場としてよく使われていたEXシアター。ヒルズから近いから迷わないとは思うけど、トイレが館内に少ないので気をつける事。あとドリンク売り場が隠れているので、初見では見つけられないと思うけど、隠しイベントみたいなものなので時間があれば探してみよう。映画館ではないから設備が貧弱なので、TOHOシネマでも上映がある作品なら、そちらを選んだ方がよいかも。椅子にドリンクホルダーが無いので、飲み物の置き場所に困る。手すりに置くと、キレイに滑って後方の席に大迷惑なので気を付ける。

 

 

■タイムスケジュール

公式が出しているタイムスケジュールは開始時間と映画自体の上映時間だけなので、単純にその数字だけ観て予定を組むと、舞台挨拶やQ&Aが思いのほか時間がかかることがあるので気を付ける。長くても30分なので、そのくらいは余裕をみてスケジュールを組もう。もちろん上映時刻のタイミングに応じてQ&Aなどを切る勇気も必要。ちなみに開始時刻は予告編もない事から時間ぴったりに本編上映となるので、シネコン気分でダラダラくると大変迷惑。

 

■コンセッション

普通にやってる!TOHOシネマのちょびっとチキンは悪魔的おいしさ。f:id:kiratta:20171105002335j:plain

オールタイムベスト

人前ではエミール・クストリッツァ監督の「アンダーグラウンド」がオールタイムベストだと言い張っているけれども、本当はアルバート・ピュン監督のB級アクション映画「ワイルド・ガン」がオールタイムベスト。ただ誰にも伝わらないから伏せている。

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未DVD化ということもあって、監督のアルバート・ピュン共々最近は話題にあがることが無い作品なので、サルベージの意味も込めてきちんと評しておこうと思う。

そんなわけで、アルバート・ピュン監督とマイベスト「ワイルド・ガン」のお話。

「ワイルド・ガン」予告編

スタイリッシュさが垣間見える良い出来栄え。

 

アルバート・ピュン監督について 
一昔前のVHSバブルの時代、レンタルビデオ屋のアクション映画の棚に君臨していたB級アクションの巨匠アルバート・ピュン監督。出来は微妙だけれども酔狂なアクション好きの琴線に触れる作品ばかり撮る、そしてブレない監督なんです。

本題に入る前に主な監督作をおさらい。

沈黙のテロリスト (2001) 
The Wrecking Crew -破壊部隊- (1999)
クレイジー・シックス (1998)
ワイルド・ガン (1997)   
オメガ・ドーム (1996)
ネメシス2 (1995)   
HONG KONG 1997/ラスト・バトル (1994)   
サイボーグ・キラー (1993)
ネメシス (1992)   
キックボクサー2 (1991)
キャプテン・アメリカ/帝国の野望 (1990)
サイボーグ (1989)  
マジック・クエスト/魔界の剣 (1981)

※日本では「沈黙のテロリスト」の劇場公開を最後に消えてしまったけど、死んだわけでは無くて、本国で細々とC級映画を撮り続けているみたい。わりと最低映画監督って評する人も多いけれども、中毒性がある作品が多くて完全にカルト化した感がある。

代表作は「ネメシス」(大好き!)

主演はオリヴァー・グラナー(ポストシュワって一時期呼ばれていたw)のSFアクション。基本的にダサい映画ではあるんだけど、要所要所に光る演出があって侮れない佳作。サイボーグ系のSFアクションとしては映画史に名前を残していると思う。続編も5くらいまであったはず。日本では当然未DVD化。ふざくんな。あとヴァンダムの「サイボーグ」が一般的には知名度が高い作品かもしれない。ヴァンダムがサイボーグではなくて、いつものマッチョという肩透かし映画だったね。

本国では一部マニアの支持で細々と生きているらしいんだけど、なにぶん情報が入ってこない。「ストリート・オブ・ファイヤ」を勝手にリメイクした「Road to hell」のブルーレイを海外から取り寄せようとしたら全然市場に出回ってなくて、本当に監督を続けているのかも正直疑わしい。そのくらいのレベルの巨匠。

よくうわさで聞いた、黒澤明の弟子だった。助監督だった等の話は多分デマ。「デルス・ウザーラ」の撮影に関わっていたって何かで読んだんだけど、裏が取れない。「オメガ・ドーム」が「用心棒」のSFリメイク(無許可)なので、ピュンが黒澤好きなのは間違いないんで、勝手に弟子って名乗ってる説を個人的に推します。

 

■「ワイルド・ガン」
ピュンの監督作の中でも知名度が高くない「ワイルド・ガン」(VHS市場でもなかなかお目にかかれなくなってきた)だけれども、出来栄えは奇跡的な傑作の一言。 いつものボンクラ演出、もたつくアクション、謎のカメラワークなどが一掃されて全てがスタイリッシュなアクションになっていた。何があったのかは分からないけれども、この作品以降はいつものボンクラ演出に戻っていたので、映画の神様の気まぐれだったとしか説明ができない。

 

■100人の殺し屋、1000丁の銃、賞金1000万ドル
「ワイルド・ガン」のストーリーはシンプル。組織に従わない殺し屋100人が集められ、賞金1000万ドルをめぐって最後の3人になるまで強制的に殺し合いをさせられるといういわゆるデスゲーム映画、でも待って97年の作品だから「バトルロワイアル」よりも早い!そしてなによりBGMがマンボ!ICE-Tが出てるんだからhiphopを流して90年代のオシャレ映画を目指せば良かったのに、なぜかラテンダンス系アクションという良くわからない作品を高次元で成功させてしまった、21世紀の今でも唯一無二の個性を持った作品。ペレス・プラードも大喜び。

ゲーム開始時の武器支給から殺し合い開始までのスタイリッシュさ

呼ばれてないのにデスゲームに参加する主演はクリストファー・ランバート。全映画ファン大正義「ハイランダー」のコナー・マクラウドの人。「フォートレス」とか「ニルヴァーナ」とか傑作映画にしか出ていないね。「ハンテッド」?なにそれ知らない、聞いたこともない。

あとはアルバート・ピュンの映画でおなじみのみんな。というかピュン映画以外で見かけないみんなも総登場。マイケル・ハルゼー、ティナ・コート、ティム・マシューズ、、、結局誰も売れなかったなぁ。。。ヒロインはデボラ・ヴァン・ボルケンヴァーグ。「ウォリアーズ」「ストリート・オブ・ファイヤー」に続いて、立て続けに神映画に出演する強運の持ち主。
2017年現在は普通のおばちゃん女優になっていて悲しい限り。

 

■主要キャラの描き分け
100人の殺し屋のうちメイン人物の13人くらいを、きちんとキャラ分けをして描き切れているのが何よりえらい。そしてその人物全てが魅力的。人物の整理力が瞬間的にアルトマンレベル!そしてなにより主人公含めて、みんな殺る気満々ってのが作劇的にえらい。特にユウジ・オクモト演じるジャパニーズヤクザが高得点。相棒のティム・マシューズとマンボを踊りながら殺し屋を狩っていくのが超絶クール。

個人的には主人公な二人組の殺し屋(ホス&クロウ)

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運営と内通している優勝候補マーカス(弱そう)

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謎の女殺し屋D(金髪)

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ゲーム無視で運営を皆殺し、ナイフ使いオスロさん(最強)

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コールガール同伴で参加するボビー(バカ)

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どうみてもギャングスタ、アイス・T(ラッパー)

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平気で人を殺す系の主人公(人さらい)

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他にも面白黒人、強制参加の会計士、天才幼女などなど、個性と魅力の塊の登場人物たちを、きちんと描き切れているのが本当にすごい。主人公vsライバル×モブっていう単純な構図もあり得たはずなのに。ハンガーゲームの20年前の映画だよこれ。

 

 

■時代の先見性
フラッシュバックする過去のトラウマ、ロングコートに2丁拳銃のダークヒーロー。21世紀に沢山作られた「マトリックス」以降のカッコつけフォロワー作品諸々に良く見られるベタな演出も多いんだけれども、これが90年代の映画というのが恐ろしい。アルバート・ピュンは昔っから同様の演出をやり続けてはいたんだけれども、なにぶんつまらない映画が多かったので話題になることは無かったのが悔しい。そんな中、唯一の成功作品が「ワイルド・ガン」。22世紀でも通じるスタイリッシュさ

ゲーム終盤、血みどろアクションの合間のドラマシーンも情感的に演出。

問答無用にカッコいい殺し屋たち。(残り6人)

殺し屋たちのバトルロワイヤル映画として、何も考えずに見ても最高に楽しいのだけれども、冒頭の 「贖罪の意味は分かるか?罪に罪をぶつけて償わせる!」のセリフからも分かるように、殺し屋の贖罪についての話なんだというのが注意して観ると気づくはず。狙撃手の背中に一瞬天使の羽根がみえたりと、それとなく演出で示唆されているので色々と深読みしながら観るのも楽しい。

 

■設定のうまさ
殺し合いゲームを生き残れるのが最後の3人と決まっているのに、主人公たちが組んだチームが4人組という設定が秀逸。確実な仲間割れの可能性をはらんだ状態であるため、作中常に緊張状態が持続する。さらに主人公も100%悪人でサイコパス寄りの殺し屋であるため(突然、全員ぶっ殺すぞ!とか叫んだりする)、あまり感情移入できないのが、結果として特定の登場人物へ肩入れを阻害して、誰が生き残るかわからないデスゲーム映画に公平な視点で没入することとができて、とても良かったと思う。邦画のデスゲーム映画でありがちな、明確な主人公とヒロインを設定したせいで中盤グダるなんて事がおこらないのが本当にえらい。 

 

■今、観るには
海外版のブルーレイであれば日本国内でも鑑賞できるものがあるので、通販などで個人輸入すれば入手が可能。我が家にはヨーロッパ版のブルーレイがある。日本語字幕はないけれども、まぁ簡単な英語なので気合で観てもらえれば。VHSは本当に見つからなくなってきたので、気合で探すかおそらく通販とかならまだゴロゴロしてるんじゃないかなと思う。相当に劣化してきていると思うけれども。

大穴はLD。日本語字幕もついているのでプレーヤーがあって、ソフトを見つけられれば現時点では一番間違いが無いかなぁ。

オタクやるのも大変ですよね。

 

さよなら監死カメラ、さよなら心霊ビデオ

この記事は監死カメラシリーズのネタバレを含みます。

というかほぼネタバレだけの内容です。 

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こっそりと監死カメラが終了してしまった。

数少ない独創性あふれる心霊ビデオシリーズだったので残念無念。

最終巻がこの手のビデオでは珍しく、きちんと作品世界にケリをつける幕引きだったので不満は無いのだけれども、これからの心霊ビデオ界隈を少し寂しく思う。特に今回のラストで、心霊廃墟マニアの菅野君が「心霊ビデオは飽和状態なんだ」とカメラに向かって独白するシーンが久々に胸を打ったので。

確かに心霊ビデオは粗製濫造状態、毎月追いきれないほど大量のチープな心霊ビデオが作られるため、雑食の映画好き達からも完全に愛想を尽かされてしまったのが本当に残念。中には少し光る作品も無くはないのだけれども、何せ弾数が多すぎるので、他の作品に埋もれてレンタルショップの店頭からもすぐに消えてしまう、本当に消費されるだけのジャンルになってしまった。

そんな中、男色霊、除霊猫、モジャモジャいましろたかし、といった独自路線を突き進んでいた監死カメラシリーズが、お化けの飽和を嘆いて幕を閉じる事にジャンルの終わりをリアルに感じたという話。

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菅野君が空に宇宙船を見つけ、心霊と決別しUFOを追うことを決意するラスト

17本続いた心霊シリーズはまさかの青空で終わった。

 

  

我々が普段目にしている世界は、本当に真実の世界なのであろうか?
人間の脳は無意識のうちに見なくてもいい情報を都合良くコントロールし、脳内で削除しているという。しかし、機械となればそうはいかない。気がつけば、我々の頭上には無数の監視カメラがある。その数は日本全国に400万台以上といわれている。1日に数千万時間以上撮られる監視カメラの映像。しかしそこに映っているのは果たして我々が目にしている世界と同じものなのだろうか。あなたの頭上の監視カメラは、時に、死の世界を見つめる眼差しとなる。
そこに写る怪奇な現象は死者の怨念や無念が形となり、我々に真実を伝えようとしているのかもしれない。

なまず映画、あるいは第二の選択

自主映画は守備範囲外なんだけれども、年末に柳下さんが「皆殺し映画通信ライブ」で絶賛していたので、ようやく重い腰を上げてなまず映画を観てきたよ。

上映会場は千駄木駅から坂道上って狭い道を進み10分、会場は記憶の蔵。

本日1回限りの上映。 
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 各地を回っているせいか、看板もくたびれていた。

 

なまず映画と言われて、どれだけの映画ファンがチェックしているのかわからないので、まずは簡単に説明すると、天願大介監督(「デンデラ」「AIKI」の監督)が商業映画から自主映画に戻って作成している映画の事。なまずのように凶暴で悪食な映画を作成する事からきているらしい。

残念ながら映画は死んでしまったようなわけで、その後に残された監督の第二の選択が「なまず映画 」です。

自主映画と商業映画の境目が曖昧になっている昨今、自主映画回帰はそこまで珍しい話ではないけれども、なまず映画の面白いところはその上映形態で、普通の映画館では上映せずに、カフェや寺など様々な場所で上映するのが特徴。そもそも自由な作品が作れるはずの自主映画界隈であっても、劇場のスクリーンを使わせてもらうためには、上映による採算が見込めるのが絶対条件であり、自主映画といえども商業的な呪縛からは逃れられないわけだ。多くの自主映画監督が、上映してくれるスクリーンを探して四苦八苦して商業映画の縮小再生産映画を作成するなか、自分たちで勝手に映画を作って勝手に上映してやる!普通の映画館では上映できないような作品を好き勝手に作ってやる!という気概が感じ取れて、とても頼もしい。

映画が特別なものでは無くなってしまった現代にあって、自主上映というスタイルには、インターネットでチケット予約していつものシネコンに行くという、マンネリ化した行為からは得られない、興行的な面白さがあると思う。今回は千駄木の古い蔵を改築したイベントスペースでの上映だったのだが、蔵で映画を観るのはもちろん、千駄木という町に行くのも初めてで、地図を片手に会場を探したのも一つの体験だったと思う(というか迷子になった。)。今回を逃したら次回都内での上映会は4月、地方の人は近隣での上映を1回逃すと、次回がいつになるのか全く分からない。でも特別なイベントってのはこういうものなのではないかなと思うわけで。

 

そういえばこれは米俳優のクリスピン・グローヴァーチャリエンの痩せ男)が、自分の作った映像作品を持って各地を回っている話にも通じると思う。クリスピンは自分が作った映像の上映条件として、自分が立ち会わないと上映会はしないと宣言しているので(というか映画館にかけられるような内容ではないので)、この作品を日本で観るためには、数年ぶりの来日だった金沢のイベントまで行く必要があった。(行きたかったけど、金沢は遠かったため未見。)

クリスピン・グローヴァー監督「What is it ?」

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ダウン症の人々とカタツムリの冒険映画らしい。好き勝手にもほどがある。

 

インターネットでなんでも視聴できる時代に完全に逆行しているスタイルではあるけれども、そういうイベント感と興行がセットになった場に参加した時の高揚感は、特別なものがある。見世物小屋などで上映されていた、黎明期の映画なんかも同じ事が言えたんだろうなぁと思う。

今後、こういうイベント的なスタイルの上映会は増えていくと思っていて、好き勝手な作品を作れる作り手と、特別な興行を楽しむ観客とのwin-winな関係が築けるんじゃないかと思う。内向的な映画オタは嫌がるかもだけど。

 

さてさて、今回観れた2本の簡単な解説

 

天願大介監督「魔王」 

あらすじ

田舎に帰ってきた嘉子ねえちゃんが、町で暗躍する魔王と戦う

 

天願大介監督「赤の女王 牛る馬猪ふ」

あらすじ

魔王を倒した嘉子ねえちゃんが、次は呪いと戦う

 

あえてあらすじは詳しく書かない。

311後、世界は中心を失いメルトダウンを続けている。磁場のおかしくなった田舎町では日常が狂い始めている。そんな中で起きた異常な事件を、嘉子姉ちゃんが解決していく地域密着型エンターテイメント作品。基本的に狂っているので、とにかく次のシーンで何が起こるのかワクワクするためにも、ストーリーは調べずにみんな観に行こう。

お話はぶっ飛んでいるけれども作りは堅実で、魔王ではカットバック、赤の女王ではモンタージュといった基本技法に焦点を当ててエンターテイメントを構築しているあたり、本当にこだわって作品を作っているんだなぁと嬉しくなる。破天荒な作品を破天荒な撮影と破天荒な編集でぶち壊してしまうケースを沢山観てきたので、そのあたり技術のある監督が撮ると違うなと感心した。

2作目の赤の女王のラストで、物語はますます不穏度を増していったため、今年作成されるらしい第三弾もとにかく楽しみ。いったい次はどこで観られるのやら。

 

なまず映画終了後、千駄木から急ぎ池袋に移動。

そのまま新文芸坐ガイナックスオールナイト「王立宇宙軍オネアミスの翼」を観ようぜに参戦してきた。

場内に流れる王立宇宙軍の軍歌。高揚するオタかっこいいみんな。 

やっぱり特別な環境で観る映画は格別なものがあるなぁと、再認識したのでした。

 

果たして映画の復権はあるのだろうか、そしてそれはどんな形でやってくるのだろうか。オタらしく(おとなしく)楽しく見守っていきたいと思う。

2016年映画ベスト10

 2016年は映画大豊作の年だった。どうしちゃったの。

映画を見に行く側としては、どの映画を切ってどの映画を観に行けばいいのかの判断がすごい難しくなったし、チャレンジ感ある上映をしているミニシアターから足が遠のいてしまったような気がする。

だってヒューマントラストの未体験ゾーン特集とか、シネマカリテのカリコレなんかに行ってる場合じゃないくらい期待作目白押しなんだもの。それに加えてネット限定公開の映画やDVDスルー作品、最近やけに力の入っているドラマシリーズなど、そろそろ体力尽きた映画オタクがバタバタと倒れていくんじゃないかというくらいのコンテンツの充実ぶり。

ミニシアターもシネコンに対抗して各種イベントを催すようになり、時間もお金も足りません。それでたまに反省して、思わぬ拾いものを拾いにイメージフォーラムユーロスペースあたりに遠征して大火傷をしてくるのも、大事な映画体験だと思います。

 

さてさて、そんな盛り上がりを見せてる映画界隈、オタの明日はどっちなのかは分からないけれども、誰か最近はやりの映画コンに参加してきて感想を教えて頂けないものだろうか。これだけ複雑になっている映画界隈で、オタとオタは分かり合えるのだろうか。

毎年恒例のベスト映画、例年は5位までしか選ばないんだけども、今年は世間にならって10作品を選んでみました。(というか絞り切れなかった。今年はベスト20くらいでも良いくらい)その時々の気分で平気でランキングが乱高下する適当なランキングなので軽い気持ちで見てやってください。

 

映画秘宝とかキネ旬のベストと比べてみよう!

 

10位 「続きをしよう」 ※鬼談百景より

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「慚残」のスピンオフ短編集に収録の「続きをしよう」が恐ろしく出来が良かった。

墓地で勢いよく走りまわる大勢の子供たち。思いっきり転んだり、倒れてきた墓石の下敷きになったりと、1人また1人と大怪我をして帰っていく(かなりのゴア描写!)が遊びが終わる様子はない。次々と血まみれで笑顔で帰っていく子供、残って遊ぶ子供たちの表情が徐々に曇っていく。大怪我をしないと帰れない。このまま墓地に残ってしまうとどうなってしまうのか。短編映画とは思えない引き込みぶりで画面から目が離せなくなる。とうとう最後の1人になってしまった子供の前に・・・・例のアレが!

ホラー映画が怖いって思ったのはずいぶんと久しぶり。必要以上に爽快なスプラッタ―音と子供の笑顔が見事に不快。

ラストのあのシーンは演出力に自信がないとそうそう撮れないシーンだと思うんだけれども、良い監督に恵まれた作品だなぁと。

 

内藤瑛亮監督はデビュー作の「先生を流産させる会」で扱ったテーマが嫌いという理由だけで喰わず嫌いしていたけれども、本作を機にキチンと過去作も鑑賞しました。きっと数年もしたら邦画の大作映画を任されるんだろう。

さっそく映画じゃなくてホラーオムニバスビデオを入れてしまった。

 

9位 「シン・ゴジラ

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要は「ゴジラ」では無くて、夢にまで見た新井英樹の怪獣漫画「ザ・ワールド・イズ・マイン」の実写映画版なんだよね。

突如現れた怪獣に振り回される政府、それこそ首相から末端の公務員までを群像劇として描いた傑作漫画を、マイルドにかつアニメチックに庵野風の味付けにしてみました的な作品。「ザ・ワールド・イズ・マイン」を読んだ時の興奮が想起されるくらいにはよく出来ている映画だったかなと。

でもでも深作版の「シン・ゴジラ」が僕は見たいよ!(深作欣二が晩年に「ザ・ワールド・イズ・マイン」の実写化を目論んでいたとか)

 この映画、恐ろしく編集のテンポが良いのでただの会話シーンでもとても爽快感があるんだけど、これを往年の日本映画の演出テンポへの回帰・オマージュだと誉めている評論もあるけれども、どちらかというと深夜アニメのノリで演出しているんじゃないかなと思ってみたり。。。

 

庵野版の「実写キューティーハニー」を僕は昔大絶賛したので、「シン・ゴジラ」でもやってくれると信じてた。でも発生可能上映で「見せてもらおうか!庵野の実力とやらを!!」ってみんなで叫ぶのは、やっぱり恥ずかしいと思うぞ!

 

8位「星くず兄弟の新たな伝説」

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 東京国際映画祭のオールナイトで鑑賞。劇場公開はもう少し先になりそう。

手塚眞監督の「星くず兄弟の伝説」の30年ぶりの続編!という全くキャッチ―さの無いキャチコピーだけれども観てよかった。

自主映画の方が商業映画よりも面白いと言うわけでは無いけれども、自由に好きな物が撮れるのは間違いなく自主映画。自分が出資者だったら絶対に止めるようなとんでもない展開も監督が好き勝手に次々と作品に放り込んでくる。(本作は正気を疑うレベル)

監督が好き勝手にやっている作品なので、波長が合うか合わないか!好きか好きじゃないかだけの話なので、自分としては最高の作品だったけど他人に勧められるかどうかは自信が無い。

自主映画で商業映画の縮小再生産映画を作っている人にぜひ見てほしい。

クラウドファンディングで200万円払うとCGで作中に登場できるらしいんだけど、これは正直アリだと思う。お金ないけど。

a-port.asahi.com

  

7位「蜜のあわれ

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二階堂ふみちゃんが可愛い。

とても可愛い。

金魚の精霊ふみちゃん。

 「狂い咲きサンダーロード」「爆裂都市」を抑えて、石井岳龍監督最高傑作!

週1で見返したくなる可愛さ!

 

6位「エンド・オブ・キングダム

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 祭りだ!祭りだ!

ハリウッドが潤沢な予算をつぎ込んで作ったフェスティバルムービー第二弾!各国首脳が次々と盛大に暗殺されるシーンや、あくまで人海戦術と力技でロンドン中を襲撃するテロリストたちなど、盛り上がれば細かい事はいいんだよ!というマインドがスクリーンからあふれ出ている今年一番のほっこり映画。

前作の北朝鮮ホワイトハウスに攻めてくる展開も大好きだけれども、今回は建物ではなくロンドン中の市街地が戦場なので、より盛大なフェスティバルが楽しめる趣向となっている。正直ドラマパートは一切記憶に残っていないので、前作の設定とかキャラとかよく分からないし、今回仰々しく死んだアイツが誰だったかのかも良くわからなかったけど、細かい事は気にしちゃ祭りは楽しめないんだ。

 

アントワン・フークワ監督が今回外れたので、作品のテイストが変わってしまうのを懸念したけれども、ビックリするくらい何も変わっていなかった。どうなっているんだ。

続編もあるらしいので期待大。

ハリウッド毎年の恒例行事として永遠に作り続けてほしいシリーズ。

鉄砲バキューン!爆弾ドカーン!

 

5位「葛城事件」

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スーサイド・スクワッド」に出てくる犯罪者軍団より、よっぽど怖いよ三浦友和

監督の赤堀雅秋さん演出のお芝居を以前観たときに、日本の一般家庭の中にあるジメジメとして不穏で嫌な感じを表現するのが上手い人だなぁと思ったけれども、映画監督としての手腕も高かったようで日常系映画の極北ともいえる完成度。(不快指数マックス!未確認生命体マックス!)

とにかく出てくる飯が全部不味そう。

 レンタル屋での本作のジャンルがホラーじゃなくてドラマになってるんだけども、心に傷持つ家族の再生の話と勘違いしてみんなに借りてほしい。みんなもトラウマになればいい。

 

監督の前作「その夜の侍」も個人的には大ヒット。

劇団も活動休止してるみたいだし、このまま映画監督一本でいくのも有りだと思う。

  

4位「サウルの息子

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トラウマ映画といえば「サウルの息子」も生涯ベスト級のトラウマ映画。(葛城事件と違って良いトラウマ)

強制収容所で働くユダヤ人が、死んだ息子の埋葬をするために奔走するというストーリー的な面白さはもちろんの事、この手の映画としては考えられないくらい斬新な撮り方(全編ピンボケで肩越しからのスタンダードサイズ撮影)をしていて、かつそれが上手くいっているという稀有な例。いや奇跡。

「携帯電話で撮影しました」「全編ワンカットで撮りました」といった撮影技法を売りにしている作品の多くが手法ありきで作られているのに対して、この映画を撮るにあたってはこの技法以外は考えられないほど、作品のメッセージと撮影技法が融合していた。正直、作品世界に入り込み過ぎて途中から逃げたくなった。

 

ネメシュ・ラースロー監督が同じ撮り方で作った短編映画「With A Little Patience(原題:ちょっとの我慢)」も中々に強烈。

 ホラーも怖いけどホロコーストも怖いよ怖いよ。

  

3位「神様メール」 

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ジャコ・ヴァン・ドルマル監督の映画は、いつも観終わった後に口ポカーンで「オッサン好き勝手な映画作りやがって!」(誉めている。)となる事が多いんだけれども、今回も最高だった。

お話の唐突さ、カトリーヌ・ドヌーブがゴリラと付き合うあたりの説得力の無さとか(ゴリラっぽいオバサンって以外の理由が見当たらない)ラストの奇跡のくだらなさとか、今回も監督の頭の中にあるイメージだけで映画一本やり切ったね、と心の中で拍手喝采。細かい事はいいんだよ!(重要)

ベルギーはジャコ・ヴァン・ドルマル監督に好きなだけ予算を与えて、自由に映画を撮らせ続けるべきだと思う。 

 まさかのTOHO系映画館でがっつり全国公開されていたから、ポップで可愛いガールズムービーをイメージして観に行った人が沢山いたんだろうな。

自分の突いてほしいツボを存分に押して貰えたので、これはDVD買っておこうと思う。

 

 2位「みかんの丘」

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コーカサスの国グルジアで起きた紛争を背景に人間の尊厳を描いた小品。

語り口がとにかくスマート。テーマが難解だからといって映画自体を殊更に難解にする必要は無いよなと感心。作劇的な起伏、登場人物に舞台設定などを極限まで削ぎおとして、キレイに作品の本質だけが残ったような、下手をするとテレビドラマ並みに平坦になりかねないところを演出で見事にカバーしていて信じられない。アブハジア紛争に興味が無い人でも、紛争と人間について少なからず何かを感じ取れる事ができるはず。

馬鹿にも薦められる紛争映画ってキャッチコピーを付けたい←

こういう万人向けの映画こそ、岩波の客層じゃなくてピカデリーのみんなに観てほしいんだけど、どうすればよいんだ。

岩波のご年配方だけの映画にしておくのは本当にもったいない。

 

 岩波つながりで、エルマンノ・オルミ監督の新作「緑はよみがえる」が、観たときはそこまでではなかったけど、余韻がいつまでも尾を引く良作だった。今回の監督賞はオルミで。

  

 1位「この世界の片隅に

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の、のんちゃーん

あらゆる人が全方向から誉めているんで、僕としては何も付け加える事が無いんだけれども。きっとこの作品はこれから何年後かにテレビ放送されて、国民的なアニメとしてジブリ作品同様に日本中から愛される作品になるんだろうなって確信してる。

今まで映画上映後にスクリーンに向かってする拍手って意味ないなと思ってたけど、この作品に関しては上映終了後に無心で拍手をしてしまった。

そういえば映画館で同じ映画を2回観たのは初めて。 

何も言わずにみんなももう1回観に行こう!

  

以上。

2016年は楽しみな映画が多すぎて人生で一番映画館に行った年だと思う。

基本雑食系で色々見ているけれども、「スーパーヒーロー映画は見ない」「邦画の自主映画はそんなに追わない」「旧作は必要に応じて観る」あたりの心理的ブレーキがまだ僕にはあるので(ガバガバだけど)本当に何でも観る映画オタの人は、今年過労で死んじゃったんじゃなかろうか。

「ポッピンQ」とか「スラヴォイ・ジジェクの倒錯的映画ガイド」とか「ディーパンの闘い」とか「クーパー家の晩餐会」どか、語り始めると終わらないほどまだまだ良作が沢山あった年だったので、2017も良い映画に沢山巡り合えると良いと思います。

さすがに観る本数は減らそうかなと。

 

2016年映画ベスト10 

1「この世界の片隅に

2「みかんの丘」

3「神様メール」

4「サウルの息子

5「葛城事件」

6「エンド・オブ・キングダム

7「蜜のあわれ

8「星くず兄弟の新たな伝説」

9「シン・ゴジラ

10「鬼談百景」