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なまず映画、あるいは第二の選択

自主映画は守備範囲外なんだけれども、年末に柳下さんが「皆殺し映画通信ライブ」で絶賛していたので、ようやく重い腰を上げてなまず映画を観てきたよ。

上映会場は千駄木駅から坂道上って狭い道を進み10分、会場は記憶の蔵。

本日1回限りの上映。 
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 各地を回っているせいか、看板もくたびれていた。

 

なまず映画と言われて、どれだけの映画ファンがチェックしているのかわからないので、まずは簡単に説明すると、天願大介監督(「デンデラ」「AIKI」の監督)が商業映画から自主映画に戻って作成している映画の事。なまずのように凶暴で悪食な映画を作成する事からきているらしい。

残念ながら映画は死んでしまったようなわけで、その後に残された監督の第二の選択が「なまず映画 」です。

自主映画と商業映画の境目が曖昧になっている昨今、自主映画回帰はそこまで珍しい話ではないけれども、なまず映画の面白いところはその上映形態で、普通の映画館では上映せずに、カフェや寺など様々な場所で上映するのが特徴。そもそも自由な作品が作れるはずの自主映画界隈であっても、劇場のスクリーンを使わせてもらうためには、上映による採算が見込めるのが絶対条件であり、自主映画といえども商業的な呪縛からは逃れられないわけだ。多くの自主映画監督が、上映してくれるスクリーンを探して四苦八苦して商業映画の縮小再生産映画を作成するなか、自分たちで勝手に映画を作って勝手に上映してやる!普通の映画館では上映できないような作品を好き勝手に作ってやる!という気概が感じ取れて、とても頼もしい。

映画が特別なものでは無くなってしまった現代にあって、自主上映というスタイルには、インターネットでチケット予約していつものシネコンに行くという、マンネリ化した行為からは得られない、興行的な面白さがあると思う。今回は千駄木の古い蔵を改築したイベントスペースでの上映だったのだが、蔵で映画を観るのはもちろん、千駄木という町に行くのも初めてで、地図を片手に会場を探したのも一つの体験だったと思う(というか迷子になった。)。今回を逃したら次回都内での上映会は4月、地方の人は近隣での上映を1回逃すと、次回がいつになるのか全く分からない。でも特別なイベントってのはこういうものなのではないかなと思うわけで。

 

そういえばこれは米俳優のクリスピン・グローヴァーチャリエンの痩せ男)が、自分の作った映像作品を持って各地を回っている話にも通じると思う。クリスピンは自分が作った映像の上映条件として、自分が立ち会わないと上映会はしないと宣言しているので(というか映画館にかけられるような内容ではないので)、この作品を日本で観るためには、数年ぶりの来日だった金沢のイベントまで行く必要があった。(行きたかったけど、金沢は遠かったため未見。)

クリスピン・グローヴァー監督「What is it ?」

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ダウン症の人々とカタツムリの冒険映画らしい。好き勝手にもほどがある。

 

インターネットでなんでも視聴できる時代に完全に逆行しているスタイルではあるけれども、そういうイベント感と興行がセットになった場に参加した時の高揚感は、特別なものがある。見世物小屋などで上映されていた、黎明期の映画なんかも同じ事が言えたんだろうなぁと思う。

今後、こういうイベント的なスタイルの上映会は増えていくと思っていて、好き勝手な作品を作れる作り手と、特別な興行を楽しむ観客とのwin-winな関係が築けるんじゃないかと思う。内向的な映画オタは嫌がるかもだけど。

 

さてさて、今回観れた2本の簡単な解説

 

天願大介監督「魔王」 

あらすじ

田舎に帰ってきた嘉子ねえちゃんが、町で暗躍する魔王と戦う

 

天願大介監督「赤の女王 牛る馬猪ふ」

あらすじ

魔王を倒した嘉子ねえちゃんが、次は呪いと戦う

 

あえてあらすじは詳しく書かない。

311後、世界は中心を失いメルトダウンを続けている。磁場のおかしくなった田舎町では日常が狂い始めている。そんな中で起きた異常な事件を、嘉子姉ちゃんが解決していく地域密着型エンターテイメント作品。基本的に狂っているので、とにかく次のシーンで何が起こるのかワクワクするためにも、ストーリーは調べずにみんな観に行こう。

お話はぶっ飛んでいるけれども作りは堅実で、魔王ではカットバック、赤の女王ではモンタージュといった基本技法に焦点を当ててエンターテイメントを構築しているあたり、本当にこだわって作品を作っているんだなぁと嬉しくなる。破天荒な作品を破天荒な撮影と破天荒な編集でぶち壊してしまうケースを沢山観てきたので、そのあたり技術のある監督が撮ると違うなと感心した。

2作目の赤の女王のラストで、物語はますます不穏度を増していったため、今年作成されるらしい第三弾もとにかく楽しみ。いったい次はどこで観られるのやら。

 

なまず映画終了後、千駄木から急ぎ池袋に移動。

そのまま新文芸坐ガイナックスオールナイト「王立宇宙軍オネアミスの翼」を観ようぜに参戦してきた。

場内に流れる王立宇宙軍の軍歌。高揚するオタかっこいいみんな。 

やっぱり特別な環境で観る映画は格別なものがあるなぁと、再認識したのでした。

 

果たして映画の復権はあるのだろうか、そしてそれはどんな形でやってくるのだろうか。オタらしく(おとなしく)楽しく見守っていきたいと思う。