オールタイムベスト

人前ではエミール・クストリッツァ監督の「アンダーグラウンド」がオールタイムベストだと言い張っているけれども、本当はアルバート・ピュン監督のB級アクション映画「ワイルド・ガン」がオールタイムベスト。ただ誰にも伝わらないから伏せている。

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未DVD化ということもあって、監督のアルバート・ピュン共々最近は話題にあがることが無い作品なので、サルベージの意味も込めてきちんと評しておこうと思う。

そんなわけで、アルバート・ピュン監督とマイベスト「ワイルド・ガン」のお話。

「ワイルド・ガン」予告編

スタイリッシュさが垣間見える良い出来栄え。

 

アルバート・ピュン監督について 
一昔前のVHSバブルの時代、レンタルビデオ屋のアクション映画の棚に君臨していたB級アクションの巨匠アルバート・ピュン監督。出来は微妙だけれども酔狂なアクション好きの琴線に触れる作品ばかり撮る、そしてブレない監督なんです。

本題に入る前に主な監督作をおさらい。

沈黙のテロリスト (2001) 
The Wrecking Crew -破壊部隊- (1999)
クレイジー・シックス (1998)
ワイルド・ガン (1997)   
オメガ・ドーム (1996)
ネメシス2 (1995)   
HONG KONG 1997/ラスト・バトル (1994)   
サイボーグ・キラー (1993)
ネメシス (1992)   
キックボクサー2 (1991)
キャプテン・アメリカ/帝国の野望 (1990)
サイボーグ (1989)  
マジック・クエスト/魔界の剣 (1981)

※日本では「沈黙のテロリスト」の劇場公開を最後に消えてしまったけど、死んだわけでは無くて、本国で細々とC級映画を撮り続けているみたい。わりと最低映画監督って評する人も多いけれども、中毒性がある作品が多くて完全にカルト化した感がある。

代表作は「ネメシス」(大好き!)

主演はオリヴァー・グラナー(ポストシュワって一時期呼ばれていたw)のSFアクション。基本的にダサい映画ではあるんだけど、要所要所に光る演出があって侮れない佳作。サイボーグ系のSFアクションとしては映画史に名前を残していると思う。続編も5くらいまであったはず。日本では当然未DVD化。ふざくんな。あとヴァンダムの「サイボーグ」が一般的には知名度が高い作品かもしれない。ヴァンダムがサイボーグではなくて、いつものマッチョという肩透かし映画だったね。

本国では一部マニアの支持で細々と生きているらしいんだけど、なにぶん情報が入ってこない。「ストリート・オブ・ファイヤ」を勝手にリメイクした「Road to hell」のブルーレイを海外から取り寄せようとしたら全然市場に出回ってなくて、本当に監督を続けているのかも正直疑わしい。そのくらいのレベルの巨匠。

よくうわさで聞いた、黒澤明の弟子だった。助監督だった等の話は多分デマ。「デルス・ウザーラ」の撮影に関わっていたって何かで読んだんだけど、裏が取れない。「オメガ・ドーム」が「用心棒」のSFリメイク(無許可)なので、ピュンが黒澤好きなのは間違いないんで、勝手に弟子って名乗ってる説を個人的に推します。

 

■「ワイルド・ガン」
ピュンの監督作の中でも知名度が高くない「ワイルド・ガン」(VHS市場でもなかなかお目にかかれなくなってきた)だけれども、出来栄えは奇跡的な傑作の一言。 いつものボンクラ演出、もたつくアクション、謎のカメラワークなどが一掃されて全てがスタイリッシュなアクションになっていた。何があったのかは分からないけれども、この作品以降はいつものボンクラ演出に戻っていたので、映画の神様の気まぐれだったとしか説明ができない。

 

■100人の殺し屋、1000丁の銃、賞金1000万ドル
「ワイルド・ガン」のストーリーはシンプル。組織に従わない殺し屋100人が集められ、賞金1000万ドルをめぐって最後の3人になるまで強制的に殺し合いをさせられるといういわゆるデスゲーム映画、でも待って97年の作品だから「バトルロワイアル」よりも早い!そしてなによりBGMがマンボ!ICE-Tが出てるんだからhiphopを流して90年代のオシャレ映画を目指せば良かったのに、なぜかラテンダンス系アクションという良くわからない作品を高次元で成功させてしまった、21世紀の今でも唯一無二の個性を持った作品。ペレス・プラードも大喜び。

ゲーム開始時の武器支給から殺し合い開始までのスタイリッシュさ

呼ばれてないのにデスゲームに参加する主演はクリストファー・ランバート。全映画ファン大正義「ハイランダー」のコナー・マクラウドの人。「フォートレス」とか「ニルヴァーナ」とか傑作映画にしか出ていないね。「ハンテッド」?なにそれ知らない、聞いたこともない。

あとはアルバート・ピュンの映画でおなじみのみんな。というかピュン映画以外で見かけないみんなも総登場。マイケル・ハルゼー、ティナ・コート、ティム・マシューズ、、、結局誰も売れなかったなぁ。。。ヒロインはデボラ・ヴァン・ボルケンヴァーグ。「ウォリアーズ」「ストリート・オブ・ファイヤー」に続いて、立て続けに神映画に出演する強運の持ち主。
2017年現在は普通のおばちゃん女優になっていて悲しい限り。

 

■主要キャラの描き分け
100人の殺し屋のうちメイン人物の13人くらいを、きちんとキャラ分けをして描き切れているのが何よりえらい。そしてその人物全てが魅力的。人物の整理力が瞬間的にアルトマンレベル!そしてなにより主人公含めて、みんな殺る気満々ってのが作劇的にえらい。特にユウジ・オクモト演じるジャパニーズヤクザが高得点。相棒のティム・マシューズとマンボを踊りながら殺し屋を狩っていくのが超絶クール。

個人的には主人公な二人組の殺し屋(ホス&クロウ)

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運営と内通している優勝候補マーカス(弱そう)

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謎の女殺し屋D(金髪)

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ゲーム無視で運営を皆殺し、ナイフ使いオスロさん(最強)

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コールガール同伴で参加するボビー(バカ)

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どうみてもギャングスタ、アイス・T(ラッパー)

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平気で人を殺す系の主人公(人さらい)

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他にも面白黒人、強制参加の会計士、天才幼女などなど、個性と魅力の塊の登場人物たちを、きちんと描き切れているのが本当にすごい。主人公vsライバル×モブっていう単純な構図もあり得たはずなのに。ハンガーゲームの20年前の映画だよこれ。

 

 

■時代の先見性
フラッシュバックする過去のトラウマ、ロングコートに2丁拳銃のダークヒーロー。21世紀に沢山作られた「マトリックス」以降のカッコつけフォロワー作品諸々に良く見られるベタな演出も多いんだけれども、これが90年代の映画というのが恐ろしい。アルバート・ピュンは昔っから同様の演出をやり続けてはいたんだけれども、なにぶんつまらない映画が多かったので話題になることは無かったのが悔しい。そんな中、唯一の成功作品が「ワイルド・ガン」。22世紀でも通じるスタイリッシュさ

ゲーム終盤、血みどろアクションの合間のドラマシーンも情感的に演出。

問答無用にカッコいい殺し屋たち。(残り6人)

殺し屋たちのバトルロワイヤル映画として、何も考えずに見ても最高に楽しいのだけれども、冒頭の 「贖罪の意味は分かるか?罪に罪をぶつけて償わせる!」のセリフからも分かるように、殺し屋の贖罪についての話なんだというのが注意して観ると気づくはず。狙撃手の背中に一瞬天使の羽根がみえたりと、それとなく演出で示唆されているので色々と深読みしながら観るのも楽しい。

 

■設定のうまさ
殺し合いゲームを生き残れるのが最後の3人と決まっているのに、主人公たちが組んだチームが4人組という設定が秀逸。確実な仲間割れの可能性をはらんだ状態であるため、作中常に緊張状態が持続する。さらに主人公も100%悪人でサイコパス寄りの殺し屋であるため(突然、全員ぶっ殺すぞ!とか叫んだりする)、あまり感情移入できないのが、結果として特定の登場人物へ肩入れを阻害して、誰が生き残るかわからないデスゲーム映画に公平な視点で没入することとができて、とても良かったと思う。邦画のデスゲーム映画でありがちな、明確な主人公とヒロインを設定したせいで中盤グダるなんて事がおこらないのが本当にえらい。 

 

■今、観るには
海外版のブルーレイであれば日本国内でも鑑賞できるものがあるので、通販などで個人輸入すれば入手が可能。我が家にはヨーロッパ版のブルーレイがある。日本語字幕はないけれども、まぁ簡単な英語なので気合で観てもらえれば。VHSは本当に見つからなくなってきたので、気合で探すかおそらく通販とかならまだゴロゴロしてるんじゃないかなと思う。相当に劣化してきていると思うけれども。

大穴はLD。日本語字幕もついているのでプレーヤーがあって、ソフトを見つけられれば現時点では一番間違いが無いかなぁ。

オタクやるのも大変ですよね。